ある銀行員の仮想通貨戦記

PCゲームとゴルフと仮想通貨が趣味のアラサー銀行員。ADK投資比率高め。仮想通貨について思ったことを書きます

ADKが銀行を買収し、オフショアバンキングを提供する計画の実現可能性を検証する

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今回の記事はタイトルの内容の通り、仮想通貨ADKの今後のロードマップの目玉と言える、銀行を買収し、匿名通貨であるADKを絡めたオフショアバンキングを提供するという一大目的が実現可能なのかどうかを、多少M&Aの案件も手掛けたことがある銀行員として、可能な限りシンプルに検証したいと考えています(結果として結構な文字数になってしまいましたが…)。

 

 


当記事では、ADKという通貨の特性についてはそこまで詳しく触れません。
ADKが何なのか知りたい人は、当記事執筆時点と現在のロードマップは少し違っていますが、以下の記事に詳しいので、参考までに一読下さい。

www.syaticrypto.xyz


話を戻します。
ADKの開発母体であるaidos kuneen財団(以下aidos)の今後の最大の目的は、オフショア地域(税率が安いor無税の地域)の銀行を買収し、その銀行で匿名通貨であるADKを連携させたオフショアバンキングにより、顧客の資産を各人の居住する国家の監視網の目から逃れさせ、租税を回避させることにあります。

 

つまり、ADKの今後の価値上昇は銀行を買収できるかどうかに大きく左右されるといえます。これが成らなければただのDAG技術を採用した匿名仮想通貨に過ぎません。


逆に、銀行を買収するという一見実現不可能そうに見える目的を掲げているが故に
「銀行の買収なんて到底無理に決まってる。scamだ」
といった批判的な声も多く耳にします。
しかしながら
「なぜ銀行の買収は不可能なのか」
を数字で示して否定した例は見たことがありません。私は皆がこれはこういうもんだと決めつけてることを、ホントにそうなのか?と考えるのが好きなへそ曲がりなので、本記事で検証することにしました。
前置きはここまでにして、本文は大きく以下の5項に分けて記述します。

 

ADKとaiods財団保有の銀行を利用したオフショアバンキング
■オフショアバンキングの利用による租税回避と法令
■銀行を買い取る とは
■銀行を買い取るのに必要な資金量は
■aidos財団の現状の資金調達量
■結論


では本題に移ります。

 

ADKとaiods財団保有の銀行を利用したオフショアバンキング

ADKは銀行を獲得した後、どのようなスキームで各顧客の資産を、顧客が居住する国家の監視から逃れさせ、租税を回避するのでしょうか。aiods財団のファウンダーであるリカルド氏は至極シンプルな形で説明しています。

1.各顧客はADKを取引所で購入する
2.購入したADKを、aidos財団の保有する銀行(以下ADKBANK)に併設された仮想通貨取引所に送る
3.購入したADKを、上記取引所にて売却する
4.ADKの売却代金は、各顧客に紐付けられたADKBANKの口座へ入金される

上記のスキームでユーザーの資産は国家が捕捉できない場所へ届きます。

そして、リカルド氏は入金されたお金をユーザーが遠隔地においても利用する方法として

ADKBANKのデビットカード発行

を予定しています。デビットカードは残高=利用可能額であり、このスキームから租税回避地に資産を置きながら、自国で金融資産を利用出来ます。

 

■オフショアバンキングの利用による租税回避と法令

仮想通貨の運用益はどの時点で確定されたと見做されるのか。
この話題が昨今仮想通貨界を騒がせています。フィアットに戻した段階での利益に対して課税ではなく、アルト間の取引にまで利益と見做された部分は課税。しかも最大税率55%というのが、本記事執筆時点でのひとまずの共通認識となっているのはご存知の通りです。

「いやいや仮想通貨間の取引なんて国でも追跡できる訳がない」
「海外取引所で利確すれば日本国には分からないから大丈夫」

こんな意見も散見されましたが、金融庁が本年10月に仮想通貨専門チームを立ち上げ、監視を強化するとの方針も出ており、加えて2017年中に日本国はAEOI(Automatic Exchange of Information for Financial Accounts:非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度)(以下AEOI)に参画することが決定しています。

このAEOIの何が恐れられているかというと、従前の国家間の非居住者に係る金融資産情報交換は、一部の例外国を除いて「相手国に問い合わせれば調査の上一応開示して貰える」というのが基本であり、このAEOIに参画した国家間では「特に相手国に問い合わせなくても、自動的かつ積極的に非居住者の金融資産情報を交換する」という点です。
つまりいかに海外といえど、AEOI参画国でありあなたが日本人(海外では非居住者)である限り、自動的に海外の金融資産情報は日本に送信され続けるということです。
もっというと、このAEOIにはケイマンやイギリス領ヴァージン諸島パナマなど、これまでオフショア地域とされてきた地域も参画しており、2018年中には101カ国が参画することが決定しています。

ADKは明確にこれに着目して計画を進めており、現在株式取得を目指している銀行はAEOIの参画地域外の国家に所在している銀行であると名言しており、ADKの匿名仮想通貨としての機能と、AEOI参画地域外の銀行をフルに利用したスキームにより、国家による金融資産捕捉と租税回避を可能とします。

 


■銀行を買い取る とは

この問いは至極シンプルです。支配したい銀行の株を51%以上(理想は100%に限りなく近く)保有すればいいのです。
当たり前のことですが、銀行といえどもいち企業です。言い方を変えると、銀行業のフルライセンスを持った企業というだけのことです。株を多く持てば支配できるという原理原則は変わりません。では買い取るにはどれ程の資金が必要なのか。aidosはその資金を持っているのかという点を検討します。

 


■銀行を買い取るのに必要な資金量は

まずどれ程の資金が必要かの前に、所謂M&Aの際、企業を買い取りたい側はどのように株を買い集めるのかを補足しておきます。細かい選択肢はあれど大きく分けると


1.取引所で買い集める(株を上場している企業の場合)
2.株の保有者に直接交渉し、相対取引で買い取る(非上場企業ならばこちらです)

以上の2つです。
一般的に皆さんがイメージするM&Aは、どちらかというと1のケースだと考えられます。いわゆるドラマチックな敵対的買収をイメージするのではないかと思います。
今回のADKのケースでは、ファウンダーの言から2に該当することが明らかになっています。

では、この項の本題のどれ程の資金量が必要となるか、という話です。
1のケースならば取引所にて市場原理により価格が定まりますが、2のケースは上場していない為この株に定まった市場価格はありません。定まった市場価格が無いこのケース、どのように必要資金量を検討すればよいでしょうか。

このケースにおいては、一般的に純資産の総額が参考数字として有力です。
例えば
・株式発行数が1,000株、純資産が1億円の会社
であれば、この会社の株は合計で1億円分の価値、1株辺りの価値は10万円相当だということです。この場合のBPSは10万円、PBRは1倍ということになり、ごく標準的な企業といえるでしょう。上場している企業ならばPBRが1倍以下~数倍ということもあり、純資産額と時価総額が大きく乖離している企業も珍しくありません。
ひとまずザックリとまとめると


○非上場企業の純資産額≒全株式買取りに必要な資金量


と考えることができます。
つまり、aidosが現在買おうとしている銀行(銀行名は当然明かされていません。M&A交渉の際、交渉途上では殆どのケースでNDAが交わされ、企業名が明かされないことが当たり前です)の純資産額と、aiodsが現在調達している資金量とを比較すれば、自ずとその銀行を買収できるかどうかが分かってきます。

さて、aidosが現在交渉途上である銀行の詳細は非開示ですが、開示されている情報はいくつかあります。

1.総資産440Mドル程度の銀行である※純資産ではないことに注意
2.AEOIに参画していない地域の銀行である
3.まずは株式の25%程度を買い取り、段階的に51%以上まで増やし支配下に置く
勿論51%を保有すればほぼ完全に支配下におけますが、25%でも経営に対しては相当な影響力を及ぼすことが可能です。

ここまで開示されていれば買い取り可能ラインの検討はかなり容易となります
「アフリカの総資産440Mドル前後の銀行の純資産の平均値」
を調査すればいいのです。
少し古いですが分かりやすい統計がありましたので、↓を参考にしました。

www.theafricareport.com

結論を画像で貼ります

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  ”多めに見積もった純資産”という回りくどい言葉を使っているのは、参考までに日本の銀行のバランスシートを見ると、預金以外にも社債等の負債勘定が若干ある為です。その為この表は正確ではありませんが、この誤差については
「買収のハードルが高まる(純資産額が増える)方向へストレスが掛かる誤差」
であり、無視できるものと考えます。

さてひとまずこの項の結論です。

○アフリカで総資産440Mドル程度の銀行10行の、多めに見積もった純資産額平均は99Mドルである≒99Mドルで全株式を買い取れる可能性がある

 

aidosが現在目指しているのは25%の株式取得ですので、25Mドルの資金を調達できていればよいということです。

参考までに、2016年12月時点での日本の上場銀行の平均PBRは0.5倍です。つまり株価の時価総額が純資産の半分ということです。
国が違うので単純比較するのもどうかとは思いますが、上記係数を当てはめると49.5Mドルで全株式を取得できる可能性もある…となりますが、この論はいささか乱暴なのであくまで参考に。

勿論、これは規模が似通った10行の平均値を出しただけであって、aidosの目的はあくまでも
「AEOI参画地域外の銀行を手に入れること」
にあり
「現時点で経営状態が良好な銀行を手に入れること」
を目的としていない為、純資産額が低い銀行に狙いを絞ればより安い資金で25%の株を手に入れることが可能になります。

 

■aidos財団の現状の資金調達量

ここまで長かったのでこの項は短くすませます。ADKの売却により、30Mドル以上を調達できているようです。一般客の購入はBTCでの購入ですが、KYC済みの大口購入はドルでの購入の形態を取っており、概算ですがこの程度と類推されます。

余談ですが、日本のADKホルダーの間では何故ADKをドルで売るのだろう?という話題が出ていました。何故ならBTCでの売却ならばCMCの時価総額へ即反映するのですが、ドルで売却するとCMCに対して相応のエビデンスを提出しない限りCMCの時価総額へ反映されない為、いくら売ってもCMC上の時価総額ランキングが上がらないのです。
今となって考えてみると、株式買収でドルを必要とする為、ドルで売っていたのだろうなと納得でき、そういった点でもaidosの方針は一貫していると納得しています。


■結論

目標%の株を買収するに当たって必要と想定される資金量:25Mドル < 現在aidosが調達出来ている資金量:30Mドル程度


分かりやすくする為に各項でかなりの簡略化をしている為、M&Aの実務経験のある人からしたらちょっと乱暴すぎだと言われるかもしれません。
私自信の、幾度かに渡るM&A案件の経験から極論すると、非上場企業の株式は「お互いが納得さえすれば幾らで売り買いしたって構わない」わけで、純資産10億の企業を、昔から心酔していた大企業経営者に対して「貴方になら5億で売っても構わない」なんていう実例も見たことがありますし、その逆に極端に高い金額を吹っかける例も目にしました。
ですので本記事の数字は全て参考数字と捉えて頂きたく思います。
あとはこれらを踏まえて、読まれた方自信で考えてみて下さい。以上です。

※情報の間違いがあれば是非指摘下さい。可及的速やかに訂正させて頂きます。